私は、二〇〇五年からブルーベリー栽培を開始した。昔からの田んぼが一枚あったが、父は農業に関心がなかったために、近隣の人に委託して麦を作っていた。

が、その頃は、何も植えられてない状態が続いていた。ならば、と思い切って私がブルーベリーを植えると言うと、父は反対しなかった。

母はもともと植物が大好きで、昔は畑仕事もして野菜をたくさん作った経験がある。どうせ田んぼを遊ばせておくよりは、何かに利用したほうがよい、という結論に達した。

田んぼを畑に変え、酸性土壌に改良し、三年かけて苗を育て、収穫期には鳥避けのネットを張る。先々に結構大変な作業が待っている。

造り酒屋の清酒需要は右肩下がりに落ち込む一方だったので、リキュールの製造免許をとって、新たに清酒ベースのリキュール製造に着手した。

その一環として、まずブルーベリー栽培を始めたのである。

早朝ブルーベリーの畑へ犬も一緒に行く。醸はどこへでも必ず一緒に行くようになった。手押しの一輪車に器具とかごを乗せる。

あるとき、急に醸が駄々をこねた。

具合が悪いのか、足でも痛いのか……これも常套手段の一つ。

仕方ないわね、と一輪車に乗せてやる。それ以来、ミニダックス専用の一輪車になってしまった。

母が笑って言った。

「それは“醸用車”だね」

畑を造り始めた年に、醸には弟ができた。が、その弟の話は、次の章に譲るとしよう。