【前回記事を読む】フローリング一面にピンク色の液体が…猫が漏らしてしまったようだ。惨状を見た妻は「もう無理なんだね」と呟いて…

悲しみの底で見つけたもの~猫さんが生きた八十九日間の記録

四月十一日(金)

この日も血尿で、強いアンモニア臭がした。ケージは三階建てで、一階部分の左側にご飯、おやつ、お水の入った皿が一つずつあり、間隔を空けて右側にトイレがある。猫さんはケージのお皿とトイレの間の隙間に腹這いになって伏せている。以前は三階まで登っていたのに。

カリカリ食を多少は食べるが、基本はシリンジで飲ませるミキサー食とちゅーるがメインだ。食欲増進剤が効いていないのか? それとも腫瘍の前には無力なのか? 抗がん剤を何度口に入れても吐き戻す。これは本当に困った。口の中に貼りついた薬を飲み込まず、上手く口の外へ出そうとする。

抗がん剤は毒性が強いだけに、子どもや我々が直に触れてはいけないと獣医師から注意されていたので、床に落ちた薬は慌てて探す。しかし、そもそもそんな危ない薬を飲ませるなよと、猫さんに口が利けたらきっとそう言うだろう。最近、点滴中、おとなしい。抗がん剤よりは点滴の方が楽らしい。

この日の水分は飲水190mlに点滴120mlで合計310ml。栄養は150キロカロリーだった。飲水はまずまずだが、もう少し自発的に食べて欲しいと思う。

四月十二日(土)

朝から動かない。ずっとケージの中でうずくまっている。飲水も不良。だが、シリンジで食事を与えると飲み込んでくれる。ちゅーるやおやつも食べてくれるので、それだけが救いだ。トイレとご飯の皿がある半径一メートルで生活している。これほど動かなくなるとは……。

夕方頃から多少活気が出てきたが、それでもあまり動かない。点滴で針を刺されるが、文句も言わず耐えている。

お尻のアンモニア臭がひどい。ここ最近はずっとそうだ。獣医さんに訊かないと。でも恐らく細菌性の膀胱炎だろうが、もう抗生剤はこりごりだ。以前の下痢は恐ろしかった。体重がみるみる減って行くのだ。だからといって、このまま拱手傍観していていいのだろうか?

この日の飲水は90ml。点滴120mlと合わせて210mlが体内に入った。栄養は必死で摂らせてようやく170キロカロリー。この弱り方で四月十九日の誕生日を迎えられるのか? 誕生日にこだわるのは私のエゴなので、無理にとは言わないが、少しでも持ちこたえて欲しい。

猫さんの誕生日は私の誕生日の七日前だ。これが、私が猫さんに出会った時、運命めいたものを感じた理由の一つだった。彼女の誕生日も私の誕生日も一緒に祝い、そしてゴールデンウィークはずっと一緒に過ごして……。昨年までそれを当たり前のように猫さんと私のケーキを準備していたのが、別の次元のお話だったように思える。