「ずいぶんと身持ちの悪い母親だねぇ」

無神経がもう一人いた。子供たちに悟られないよう、語気を強め、それでいて密やかな声で抗議をする。

「あの、そういうことを、子供には」

「おう、こりゃ口が滑った」

頭髪の薄い部分をペタペタと叩いて謝罪する。まったく、老すれば鈍するとはこのことだ。

人間歳を取ると、どうしてこうもデリカシーを欠いてしまうのか。

人間関係の構築が苦手な人間が言うことじゃないけれど、言っていいことと悪いことの分別くらいは持ってほしい。

「気にしてないってば。何があっても由香は僕の妹だもん」

こちらの困惑をよそに、少年が幼い決意を表明する。ユカちゃんが兄の袖口をキュッと摑んで唇をツンと尖らせた。

こんなにも幼い身体で、身勝手な大人たちがこさえた世界を生きている。親元でぬくぬくと暮らす、わたしよりずっと立派だ。