【前回の記事を読む】妻を亡くした父が、息子のいない間に“AI彼女”を起動。プロフィールにあったのは「否定的な言葉は抑制される」の一文で……

息子にAIを彼女として紹介されたらどうしよ

第3章 仕様と設定

妻は、生前けっして温厚な人間ではなかった。

良く言えば正直、悪く言えば口が悪い。

「なんでそんな言い方をするんだ」と私が反発しそうになることも、多々あった。

だが、その小さな棘のあるやり取りの中にこそ、互いの距離を測るための目盛りが刻まれていたのだと思う。

少し痛いくらいの言葉でぶつかり合い、そのたびに「これは言いすぎた」「ここまでは許せる」という線引きをやり直していた。

批判の抑制された関係は、果たしてどこまで「人間関係」と呼べるのだろう。

『何かご不明な点があれば、ヘルプメニューをご覧ください』

画面の端に、丁寧な案内が表示される。

私はそれを無視して、「関係性ラベル」の欄に視線を戻した。

『パートナー(ユーザーA)』

アラタのことだ。

括弧の中のアルファベットが、やけに事務的に感じられる。

『ゲスト(ユーザーB)』

その下には、小さく灰色の文字で注釈があった。

『ゲスト:ユーザーAとの関係を補佐する立場として認識されます。

ゲストに対する発言は、ユーザーAとのコミュニケーションを円滑にすることを優先します。』

私は、ため息をひとつ吐いた。