俳句・短歌 歴史・地理 歌集 古事記 2020.10.11 歌集「古事記物語・異聞」より三首 歌集 古事記物語・異聞 【第21回】 松下 正樹 私たちの太陽(アマテラス)はどこへ行ったのだ? 日本人の原像がまざまざとよみがえる。 日本最古の史書『古事記』に登場する神々の世界を詠う、他に類を見ない叙事的な歌集。叙情的な文語と明快な口語を絶妙に組み合わせながら、神々の悲哀と愛憎をつぶさに表現する。 日本の神々は、民と交わり、民とともに働き、人間同様死にゆく存在でもある。 王国の成立と興亡の歴史が秘められた『古事記』の世界を、人々の悲しみと喜びを歌で再現。日本人の原点の物語を連載でお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 あかねさす日もいまはなし常闇に 悪霊が満ちばっこしたり 神々は闇をうれひて集ひたり 安の河原に会議をもよほす *安の河原 天の安の河原。 岩屋より戻られるにはいかにせん さまざまな策が練りあげられる
小説 『アイアムハウス』 【新連載】 由野 寿和 静岡県一家三人殺害事件発生。その家はまるで息をするかのように、いや怒っているかのように、大きく立ちはだかり悠然としていた 午前十一時。サイレンを鳴らさず、車両は静岡県藤市十燈荘(じゅっとうそう)に到着した。静岡中央市にある県警本部から十燈荘までは、藤湖をぐるっと大回りして藤市経由でトンネルを通り、小山を登ることになる。藤湖を見下ろす高級住宅街、十燈荘は、土曜の昼だが活気はない。既に外部への交通規制が敷かれているとはいえ、不気味に静まり返っている。ここで殺人事件があったことを、住民達が知っている気配はなかった。その家…
小説 『ヴァネッサの伝言 故郷』 【第7回】 中條 てい 兄ガブリエルの恩人である老医者イダのもとへ。扉を開け放つと、皺だらけの老人の顔が覗き「馬鹿たれが!」としゃがれた声で… プレノワールの領主カザルスは、世間では“変わり者”と評判だが、そう称されるのは、彼がある意味、非常に柔軟な価値基準を持っているからだ。優れて珍しいものであれば、彼は洋の東西も貴賤(きせん)の区別もなく、身辺に人や物を集める。イダはそんな彼が招き入れた、ちょっとこの辺りでは見かけぬ異邦人の老医者だ。どこで生まれてなぜこの地に辿り着いたのか、聞けばきっと面白い経緯(いきさつ)があるのだろうが、それを…