剣の稽古は実践形式となった。鮪の助言を受けながら、稚鷦鷯は詰め寄っていく。そして、最後には稚鷦鷯が鮪を追い詰め、勝利した。

「お見事です。稚鷦鷯様」

「鮪がわざと負けたからだろう」

「い、いえ。そのようなことは……」

鮪は首を左右に強く振った。そして、急ぎ気味に二本の剣を鞘に収めた。

「嘘をつかなくてもよい。鮪は我が軍の大将、金村(かなむら)の次に強いのだろう。それなのに、俺に負けるわけがないじゃないか。

わざと負けたりしないでくれ。そうでないと、俺はいつまでたっても強くなれない」

「あ、はい。あっ、いえっ。そのようなことはございません。稚鷦鷯様は強くなっておられます。確実に」

「本当に?」

「もちろんです」

いつにもない、鮪のはっきりとした言葉。稚鷦鷯の頬に、えくぼがくっきりと現れた。その天真爛漫な笑みにつられて鮪も微笑んだ。

「で、でも、一つ、申し上げますと……」

「なんだ」

「あ、はい。あの、皇子様は“守り”が弱いかと。“攻め”に気持ちが入ってしまい、守りがおろそかになっています。

稚鷦鷯様はただ一人の直系男子。天照大神様の血を純粋に引いておられる皇子様は、稚鷦鷯様しかおりません。

大王になれば、なおのこと、ご自分の命を守らなくてはなりません。ですから、守りの剣も習得された方が良いと思います」

「鮪。お前も、そのようなことを言うのか」

 

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