【前回の記事を読む】参観日、私を見たママ友2人が顔を見合わせ逃げた。翌日「お茶しに来ない?」と呼ばれ、そこで告げられた“噂”とは……
耳
耳を疑う ゆりえ三十二歳 2
スーパーで買い物中に自転車を盗まれたゆりえは、自嘲気味にみゆちゃんママとけんとくんママにこぼした。
「ほんとにいやになっちゃった。だって自転車で来たから、お米やらドリンクやら重いものばかり買い込んでて。これ歩いて持って帰るのって思ったら、そこが一番苦痛で~」
ここで笑いが起きると思ったら二人は何か上を向いて考え込む仕草だ。かまわず続けた。
「でね、一旦、重い荷物を運んで冷蔵庫に押し込んだ後、出直したのよ。駅前交番」
「交番!」
なぜか二人はここで声を揃えた。目を輝かせた。食い入るようにゆりえの口もとを見る。
「そうしたらお巡りさんが『検分します!』といって、店頭の駐輪スペースに立ったので、私がここに停めててなどと話したら、懸命にメモを取った後で、これは高校生の仕業ですねって。そう言い切ったのよ」
「高校生って?」
二人が揃って首をかしげる。
「自転車の窃盗が地元の高校生の間で流行ってるらしいの。窃盗っていうか乗り捨て。使い終わって必要なくなったら、適当にそこらに捨てておくらしいの」
「自分の自転車、持っているだろうにね」
とみゆちゃんママ。
「ゲーム感覚なのかな。ほんと頭に来ちゃう」
「自転車ないと困るわよね。私はいつも車だからあまりぴんとこないんだけど」
外車に乗っているけんとくんママが、そう言いながら紅茶をすっと飲む。
「そうなのね。ああそうだ。ピン。ヘアピン1本で開けるっていってたわ。だからお巡りさんが、輪っかになったループチェーンもかけて二重に施錠してくださいって。でも、そのかけるべき自転車がないんだからねえ」
ここでも誰も笑わなかった。
「ねえ、噂ってこのことでしょ。お巡りさんが来た頃は5時半近くて人が多かったもの。誰かに見られても不思議じゃないわ」
「それがね……」
けんとくんママが口を濁す。
かまわずゆりえは言った。
「お巡りさんがね、『そこに停めたんですね、どの向きで停めたんですか?』とか指差しながら聞くの。だから私、思ったの。がっくりしてうなだれて聞いてる私って、まるで万引きが見つかった主婦みたいって」
うっとみゆちゃんママがむせ、一瞬口を押さえてから金切り声をあげた。