【前回の記事を読む】明確な理由なんてなかった……それでもペンを握るのは“約束した人”がいるから
第三幕 きづくこと
「急ですね……いやでも! レッスン! ほら、レッスンとかもどうするんですか」
先輩は、ぼそっとつぶやく。
「……やめたよ、あんなトコ」
「やめたって、劇団を? ……どうしてですか? あんなに芝居が好きって言ってたのに」
先輩は急に僕の方へ距離を詰め、平手打ちをした。
「コウくんの書いた本じゃないと意味ないの! また勝手に一人で突っ走って!」
先輩は僕に抱き着き話した。
「置いていかないでよ……バカ」
アルコールの鼻をつんざく匂いが僕を襲う。僕は先輩をどうすることもできず、大田さんや藍原さんに助けを求めて視線を送る。
しかし、二人とも手を出せず、お手上げ状態だった。
「とりあえず、先輩。中に入りましょうか。ね?」
中に入ると、先輩は渡された毛布にくるまり、ぐっすりと寝てしまった。
「本当に、すごい剣幕だった。俺の顔を見るなり、お前のところに連れていけ、としか言わなかったんだぞ」
「先輩……」
大田さんは、一つため息を吐いてから、僕に封筒を手渡す。
「……なんです? これ」
「お前に渡したかったモンだ」
僕は、その封筒を受け取ろうとする。僕の手が触れる寸前、大田さんはそれを持ち上げた。
「今すぐ開けるんじゃねえぞ。こいつは、お前が腹を決めた時のために取っておくんだ」
僕にはその言葉の意味はわからなかったが、とにかく受け取り、手帳に挟んだ。