【前回の記事を読む】傘1本でその人の「育ち」は大体分かる。ビニール傘は準備ができない詰めの甘い人間、ブランド傘は……

8.THE WORLD IS MINE

私は1秒でも早く圧倒的な居場所を確保したい。それも、できる限り消耗せずに。雇われの身になった私を想像すると、3年もたたないうちに心身すり減って休職コースまっしぐらの図しか浮かばない。

邪道も邪道の道を突き進んできた人間が、ここいらで急に優等生になれるわけがない。無理なものは無理。邪な人間は邪な道をひたすら突き進むしかないのだ。それが私の生存戦略だ。

じゃあ社会を変えるような革命家? 人々の不満を代弁して社会を変えようとする動きは確かに立派だ。

立派だが、社会の脆弱性を突っつく異端者は糾弾される運命にある。指摘が正解でも不正解でも、関係なく。

今まで信じてきたことが間違いだと気づかされた人間は、心が壊れる。それを認めたら、自分が壊れるから。

ガリレオ・ガリレイも渡辺崋山も、人類の歴史はその繰り返しだ。真実を言った人間は迫害されるのみ。どれだけ文明が進んでも、構造だけは変わらない。

まず私には革命家に必要な明晰な頭脳も、世界を変えるアイデア力も一切ない。持ち合わせているのは、ペーパーテストに特化された偏った頭脳だけだ。世界は変えられないし、変える気もない。変えようとして焼かれるのはごめんだ。

まず、私の武器は顔面と、暗黒面に堕ちた精神性。この2つだ。

高校生活はこの顔面を武器にして綱渡りしてきた。見ず知らずの人間の部屋を自分の身体だけで渡り合ってきた私に、顔への文句があるならば、同じ事やってから聞こうと思う。3年間やってきた人間の言葉には、それなりの重さがある。

そして私の心を覗けば、これほど難儀な人間はそうそういないだろうと自分でも思う。相手を汚してやるという意地汚い衝動と、自分がどんなに汚されてもいいという自傷に近い感情が、狭い胸の中でひしめき合っている。

それに加えて、ここに愛情障害もある。誰が嫁に貰ってくれるんだ。まあ結婚願望なんてものは、あの家で育った時点でとっくに死んでいるが。あの家族を見て結婚に憧れる人間がいたとしたら、そいつは相当なロマンチストかよほどの物好きだ。

いじめという行為を足掛け6年間やり続けた人間の「相手を汚してやりたい」という気持ちの総量は、想像するだに濃い。言わずもがなだ。

そして「自分が汚されてもいい」という感情は、見ず知らずの相手に体を売ることで証明づく。シンプルに犯罪だということを脇に置いても、何が悲しくて華の女子高生が正体不明の成人男性と同衾しなきゃならんのだ。

知らず知らずのうちに、手の込んだリストカットを強いられてきた。病み垢をせっせと運営している軟弱者ども、かかってこい。こちとら骨身に染みる自傷行為を、生きるために3年間やってきたんだぞ。ソフトな痛みで満足できるお前らとは、土台が違う。

そもそも汚れる覚悟のない人間に、この舞台に立つ資格はない。戦場で銃を構えておきながら、撃たれたら不公平と騒ぐのか。撃つ覚悟は撃たれる覚悟と表裏一体だ。衛生兵でもない限り、その理屈は通用しない。