「もう、笑っちゃったわよ」

その日の夜、ガラクシアで麻利衣は千晶と飲んでいた。

「あんなに死にかけてた人が急に元気になって無理に退院しちゃったもんだから心配してたら、鍬下さんが救急外来に来てるって聞いて、だから言わんこっちゃないって思って飛んで行ったら、顎が外れただけだなんて、ほんとにウケた。でも、大声で笑ったらムッとしてたけどね」

千晶は思い出し笑いをしながら言った。

「で、顎は戻ったの?」

「簡単に戻ったわよ」

「そう、よかった」

「でも、まさかね」

千晶は意味深な目つきで麻利衣の顔を見ながら言った。

「何?」

「賽子さんがあんなに鍬下さんのことを想ってたなんてね」

麻利衣は昏睡状態の鍬下の手を賽子が握っていたという話を思い出した。

「ああ、あれは鍬下さんを回復させるために賽子さんが超能力を使ってたのよ」

「あれ? 麻利衣は超能力なんか信じないんじゃなかったの?」

千晶はからかうようににやけながら言った。

「それはそうだけど……ちょっと何、やめてよ。何か勘違いしてるみたいだけど、私、別に鍬下さんのこと何とも思ってませんから」

「ええ? そうなの? なんだ、面白くない」

千晶は口を尖らせた。

「それより千晶、結婚式のことなんだけど、少し延期できないかな?」

「えっ、何で?」

「実は……」