【前回の記事を読む】スパルタ軍の戦意を喪失させ、テーバイを奪還した方法。「戦わずして心理的脅威を与える」戦略で、篝火を焚いて……

第一章 テーバイの解放

本国に引き揚げてゆくスパルタ兵を見送りながら、テーバイの人々は「祖国が解放されたぞ」と口々に歓喜の勝鬨(かちどき)をあげた。

一方、コリントにいたスパルタのクレオンブロトス王は、急使からの報告でテーバイ人の蜂起を聞き知るや、ボイオティア目ざして進軍を開始した。

が、アテネの西隣にある都市メガラまで来たところで、テーバイから逃げてきた総監たちが駆け込んできて、「テーバイを取り戻すことなど、無理です」と、口をそろえて言いたてるので、クレオンブロトスも渋面をつくり、テーバイへの進軍を停止。

結局、反撃に転じることもなく、指揮官をひとりテスピアイに残留させると、テーバイから逃げてきた三名の総監を連れて、すごすごとスパルタ本国に撤兵した。

テーバイから、おめおめと逃げ出してきた三名の総監は、スパルタで非難の的となり、ヘリッピダスとアルケソスは処刑され、のこるリュサノリダスも重い罰金を科されてペロポネソス半島から追放された。

テーバイでは、スパルタの本隊による攻撃を予測し、厳重に応戦準備を整えていたが、クレオンブロトス王がなすすべもなく撤退したのを確認すると、ひとまず危機は去ったと判断し、故国の解放と自由を祝しあったのであった。