「この野郎。社長出てこい。客の手付を返さねえとはふざけた野郎だ。大体、やっている事が違法じゃねえか。反対に手付の倍返しをして貰うぞ」

するとその時、たまたま奥にいた社長は、その怒鳴り声にびっくりしたのか、一瞬、僕と佐伯さんの方を見やると、まるで逃げ込むようにして、あわてて奥の部屋の方に引っ込んでしまったのである。

しばらくすると、彼の代わりに、僕の在社中にも何かと反りの合わなかった古参の営業課長が出てきた。

「この野郎、横沢。てめえは大体、若造のくせして以前からやる事が生意気だったんだよ。因縁をつけるんだったら、こちらは別に警察を呼んだって、構いはしねんだからな」と、逆に凄みをきかせながら、何やかやと理屈をつけ、まるでやくざが脅すように、我々を追い出しにかかったのである。

「警察を呼べるんだったら、呼んでみろ。困るのはそっちの方だろう」

などと、こちらも色々言い返したりしながら、すったもんだした挙句、これでは埒があかないと思った僕は、もう目が引きつって真っ青な顔になっていた佐伯さんを、その場で何とか宥めるようにして落ち着かせると、予定通り、会社のすぐ近くの、ふだんこの会社に手付金などの買い取り費用を融通していた大手銀行の支店にまで押しかけて行ったのである。

そして、受付の女性をびっくりさせるほどの剣幕で、無理やりそこの担当者に面会を申し入れ、応対した担当者に不動産会社の日頃の不法ぶりを滾滾と説明したのであった。