一通り誠先輩の話が終わったところで両親が話し始める。

「この家に来る途中に高校があったでしょう? あそこに行ければいいなって、娘と話してるんですよ」

お母さんが俺の目を見て言う。

俺の目を見て言うものだから、誠先輩は、何か答えろと俺の膝をつついて、目配せしてくる。

俺から何か話さなければならない。

「あぁ、確かT高校ですね」

「そう、別に進学校だからって訳じゃないんですけど、家から近いしね」

そう言いつつも、近所の手前、目の前の進学校を横目に、家から少し遠い二番手の高校には行かせたくないという思いが見え隠れする。

初めて教える予定の生徒が、中三になったばかりの思春期の女の子。先輩は自分が教えるのには抵抗があって、押し付けてきたのではと私の心は懐疑心がぬぐえない。

陽葵の両親は「少し席をはずしますね」と言い部屋から出て行った。きっと俺のことを品定めしているに違いない。親や子どもは、家庭教師を選べても、家庭教師は生徒を選べないものだ。

陽葵は「先生、高校どこ? 大学どこ? 何で家庭教師やってんの?」矢継ぎ早に訊いてくる。

プロフィールには書いていたが、陽葵は眼を通してないのだから、興味津々だ。学歴などは、プロフィールに書いたことを復唱すればいいものの、陽葵に、家に来た経緯をどう説明すればいいものか。お決まりのセリフを忘れているのに、仲間から舞台に投げ出された三流俳優は、こんな気持ちなのだろうか。

次回更新は7月15日(水)、14時の予定です。

 

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