【前回の記事を読む】先輩の「事務所」を訪ねると、駅30分の雑居ビルだった。事務バイトで雇ってほしくて行ったのに、言われた仕事は…

第二景 陽葵

三日後、再度、先輩の事務所を訪れた。

「先輩、とりあえずプロフィール作ってきましたよ」

そう言うと、先輩が俺の作ったプロフィールを見て笑う。

「お前、堅物だなぁ。就活の履歴書じゃないんだから。もっとフワッと書けばいいんだよ、フワッと」

確かに学歴を中学校から書き、必要もないだろうに、自宅から家庭教師センターまでの通勤時間、家庭教師をする動機まで書き上げてしまっている。指摘されてこっぱずかしくなってしまった。

「よし、じゃあ今から行くか」

「え、今から……」

まさか、もう先輩と先方の間で話が出来上がっているのだろうか。これじゃあ、まるで日雇い労働者が集合場所に着くや否やトラックに乗せられたようなものである。

「大丈夫だよ。あとは任せとけって」

半ば強引に、俺を親戚宅へと連れていった。

「おーい、先生連れてきたよー」

先輩の声に呼応して、両親が玄関先に現れた。

「誠から話は聞いていますよ」

いったい、どういう風に聞いているのか?不安がよぎったが、親戚の子を紹介するのだから、まあ悪いことは言ってないであろう。

少し間をおいて、女の子が階段を降りてきた。

えっ? 女の子? 先輩にはなにも聞いていなかったし、生徒は男の子と思い込んでいた自分の詰めの甘さを後悔した。