遅れてやって来た反抗期
素直で、大人しかった彼も四年生になったあたりから意思表示をはっきりするようになった。表情が豊かになってきたが、拒否行動も目立ってきた。
お母さんの高いレベルの要求にも従順に従い、受け入れてきたのに、反抗するようになってきたのだ。
加えてお母さんより背が伸びたお姉さんの方は一足先に激しい反抗期に入っており、さすがのお母さんも参っているようで弱気になっていた。
自分よりも背の高い娘から上から目線で反抗され、今はお母さんと同じぐらいの背になりそうな息子の拒否的態度に気丈なお母さんも気持ちが萎えて、黙ってしまう場面が想像できた。
その頃彼は一人歩きの練習を始めていたので、お母さんは離れた所で待っていた。
彼の拒否行動がこばとでも強くなってきたので、私の方から出向いて、路上であったが彼の生活態度をお母さんに聞いた。面談日まで待てなかった。
立ち話で話すお母さんの顔にはやつれが目立ってきていた。
彼の反抗が次第に暴力的になってきた。
本人にとっては幼児期のような振る舞いも、力が付いてきて大人並みの体格になると、一歩間違うと暴力になってしまう。
彼の精神年齢の発達はゆっくりだ。イヤイヤ期が今にずれ込んでいる。療育中にも彼の反抗的な態度はスケールが大きくなってきた。
私はお母さんに、医師に相談して、服薬も考えてはどうかと提案した。
幸い彼らのマンションに近いエリアに「こころのクリニック」があり、大人だけではなく発達障がいの子ども達も多く通院していた。
するとお母さんは「私はもうそこに通っているんです」と驚くべき返事。
あんなにタフだったお母さんが通院? 聞けば鬱状態が続いているという。
無理もない。娘の反抗がピークでなすすべがない状態のうえ、あんなに大人しく素直だった息子にも反抗の態度が見えてきたのだから、さすがのお母さんも心が折れてきたのだろう。
これまでは自分の努力で困難を克服して望むものを獲得してきたのに、自分の頑張りだけではどうにもできない子どもの問題に直面してお母さんもさぞ苦しいだろう。