【前回の記事を読む】50年前、生物学者が考察した「古伊豆半島」の真の姿。本州から青ヶ島までをつなぐ巨大な陸地が存在していたとされていて…
第二章 日本列島周辺の沈んだ大陸
二 伊豆諸島の沈んだ大陸
古伊豆半島
伊豆諸島の動物や植物は、そこがかつて日本列島と陸続きであったことと、その後に海で隔てられ独自の生物相が形成されたことを示しています。
とくに伊豆諸島と伊豆半島の遺存種(いぞんしゅ)は、そこが大きな半島だった時代に中国大陸や朝鮮半島から日本列島を経由して渡り、海に隔てられて島だった時代にシモダマイマイやオカダトカゲのような生物がそこで独自の進化をとげて固有種となったと思われます。
すなわち、伊豆半島と伊豆諸島の遺存種は、南に長くのびた古伊豆半島の存在と伊豆半島が南から移動してきたものではないことを証明しています。
それでは、その古伊豆半島はいつ存在し、どのように切り離されて、現在に至ったのでしょうか。
伊豆諸島の固有種は、九州の南にあるトカラ諸島の遺存種と関連が深く、トカラ諸島にはその南部の悪石(あくせき)島と小宝(こだから)島の間に引かれた動物地理境界線である「渡瀬線」があります。
この渡瀬線はニホンマムシなど日本列島の動物の南限で、ハブなど琉球諸島の動物の北限にあたります。
渡瀬線は、トカラ諸島の東側にあるトカラギャップと呼ばれる水深約一〇〇〇メートルの海底の溝に引かれていて、そこには今から五〇〇万年前以降の地層が厚く堆積していて、中新世にはそこに深い海峡があったと推定されています。
私の海洋地質学の師である星野通平先生は、今から約六〇〇万年前の中新世末期に現在の水深二〇〇〇メートルの等深線付近に海岸線があったという仮説【1】を主張されています。
試みに、駿河湾から伊豆諸島にかけての水深二〇〇〇メートルの等深線を見ると、八丈島の南側までのびた幅広い古伊豆半島が出現します(図13)。