【前回の記事を読む】「レポート課題で精一杯。余裕がないよ」とこぼすと、「帰ったらご飯が出てきて、掃除や洗濯もされてるのに?」と畳みかけられた

積善の家に余慶あり

山をこよなく愛する渚は北九州SDGS大学生命探究学部に入って本当によかったと思っている。いろいろな分野があるが人間が地球環境とどのような関わり合いを持って生活しているかの分野は特に興味を持った。渚自身、山を登ると“ああ、人間って自然の一部なんだ、自然に生かされているんだ”と実感していた。

その分野を深く研究できることは生命を探求していることと一緒だった。

渚の大学生活は、春海と生命探究学部の研究のおかげで充実したものとなった。

二年後、渚は地元の商事会社、田島商事に就職をした。弟の光輝は、地元のヤンキーがたくさんいる大学に入学した。

借家の望月家の真向いに大豪邸がある。権藤家の家だ。そこの同級生の権藤一馬とは長年の因縁がある。

まず、小学校の初対面の時にいきなり、

「お前、真向いの汚ったねー家なんだろ? よくあんな家に住んでんな!」

「お前のかーちゃん、いつも同じ服でチャリンコで仕事行ってんな! みっともねーなー!」

と言ったのだ。汚ったねー家に住んでいるのはまだいい、だけど母ちゃんを侮辱するのは許せなかった。許せなかったけれどその時はそれを言葉にして反撃する術を持たなかった。ただ唇を噛みしめていた。

それから、権藤一馬は事ある度に望月家の悪口を言いふらした。それでも、小学校低学年の頃は誕生日会と称して友達とその母親が大豪邸に招待された。ひふみもパーティーは嫌いじゃないので行ってみると一馬の母の陽子は、

「あーら、渚ちゃんのお母さん! いらっしゃい、広いお家にようこそ!」

と言ったのだ! 暗に、いや、あからさまに望月の家を小さいみすぼらしいとけなしている。