ひふみはむっとして、

「広い家も住む人によっては宝の持ち腐れですわね、オホホホホ」

と言ってやった。それ以来、二人は犬猿の仲になってしまった。

陽子は、招待した親を中心にいかにこの家が素晴らしいか吹聴した。家や内装は不動産をしている父・冬馬が、インテリアや服装はアパレル業の社長をしている母・陽子が自分たちの思い通りに作り上げた。ロココだかココイチだか知らないが建築様式は本場イタリアから職人を呼んで建てさせたらしい。

調度類もヨーロッパ風のテーブルや家具、スプーンやフォークに至るまで高級感あふれるものばかりだった。いわゆるヨーロッパ貴族の宮殿を日本に再現したみたいだが日本人には不似合いだった。

冬馬は、見るからに強面の不動産のやり手社長だった。誕生日会をしているとちょうど帰ってきてみんなにこう言った。

「皆さん、息子、一馬の誕生日に来ていただいてありがとうございます。息子は権藤コンツェルンを継ぐ男です。どうぞご支援をよろしくお願いいたします」

と大物政治家が応援の候補者のために演説しているかのように言った。渚やひふみも唖然として見送っていると、お手伝いの女性に掃除のやり方が悪いと怒鳴っているのが聞こえた。

それ以来、渚とひふみの間では権藤家には気をつけろ! と言うのが合い言葉となった。

それは二〇二〇年一月、朝のニュースから始まった。

『中国、武漢において新型コロナという未知のウイルスが発生し、多くの市民が感染し死亡者も出ています。すでに全世界に広がっており、各国はその対応に追われています』

日本ではまだ出始めだったので渚はたくあんを食べながら、

「感染力が強くワクチンも無いんだってぇ、くわばら、くわばらって、久しぶりくわばらって言った、あははは!」

とよその国の恐怖映画くらいにしか思っていなかった。