それがあっという間に感染者はひろがり渚が住んでいる地域にも何人も入院患者が出るようになった。連日ニュースは感染者数を発表したがその数は驚異的に拡大していった。人々は、その進行の速さと死者の数に外出を控え、マスクをし、未知のウイルスに怯えた。
善行は珍しく真剣な表情で、
「マスク、手洗い、うがいの徹底!!」と何度も念を押した。
そんな時、善行がタクシー運転手の仕事を終え帰ろうとしたところ、一人の女性が路上で倒れ込んでいた。
「どうしました! 具合でも悪いのですか? 救急車を呼びましょう!」
女性は、かなり苦しいらしくゼーゼー息をきらしている。救急車を呼んだがすぐには来ない。車のシートに横にさせ、心音を確かめた。
その音は、例えるなら入り組んだ洞窟から聞こえてくる禍々しい悪魔の叫び声!
「……」
善行はその音を聞くとゾッとした。この女性は何かに取り憑かれているのではないか!とさえ思った。
ものの十分くらいだろうか? 寒いのでドアを閉め暖房を入れ、密閉した車内で献身的に看病したのだった。その女性は、物々しく救急隊員に連れ去られるように運ばれていった。立ち去る間際、救急隊員から「体に異変があったらすぐに病院へ行くように! 流行病かもしれないので!」と言われていた。
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