「何よ突然! やだー郁ちゃん。英介さんびっくりしているじゃないの」

「いえいえそんなことないですよ。最近ではよくあることなんじゃないですか」

英介は笑顔で言いながらも、あまりにも突然過ぎてびっくりしたのか飲んでいたお茶が自然とゆっくり鼻から流れ落ちてきた。

「あーこれで拭いて、ごめんなさいね。いきなりこんな話になっちゃって」

佳那はウインドブレーカーのポケットからハンカチを取り出しそっと英介に手渡した。

「ありがとうございます。最初鼻血かと思いましたが鼻血じゃなくて良かったです。すみません。これ洗って返しますね」

英介が手にあるハンカチを戻そうとした瞬間、すかさず佳那はそのハンカチを笑顔で取り戻し、ウインドブレーカーのポケットに収め神対応した。

「三年前、いきなり主人を亡くしてから抜け殻みたいになってしまったの私……。それである時、気が付いたらよく主人と歩いていたこの遊歩道を散歩してた。ふと見ると可愛いベンチがあり座ってここから見える街や山々の景色を眺めてたの。その時に主人との間に子供がいたら一人ぼっちでもなく寂しさも半分ですんだのかなぁと考えていた。

そしたら向こうからものすごい勢いで男性が近寄って来てここに座っていいですかと聞いてきたの。それでいきなり死んではいけませんよ、とすごい汗をかきながら話し掛けてきたからびっくりしちゃってタオルを投げつけちゃった。自分が思ってなくても外からはそう見えるのよね。不思議ね。

でも、もしかしたらその時、声を掛けてもらえなかったら川に飛び込んで身投げしていたかもしれないわよね。それからというもの、その男性が親身になって私の話を聞いてくれた。案外、私の命の恩人かもね」

と言って佳那は郁三の方に目を向けた。

「私も十年前に妻を亡くし同じような感じだっただけに放っておけなかったんだよ。それからというもの定期的に会ってるんだ」

試し読み連載は今回で最終回です。ご愛読ありがとうございました。

 

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