【前回記事を読む】ひと月ぶりに家に帰ると、夫が両親に土下座して謝罪していた。「あの離婚届はドッキリのつもりだった」と伝えると…
郁三との一日
次に英介は郁三が大事に育てているあじさいなど花の水やりをし家の用事を済ませた。
「英介、動きやすい格好に着替えてきなさい。ウォーキングに行くぞ」
いつの間にかジャージに着替えた郁三が英介に声を掛けてきた。それからまもなく英介もジョギングスタイルになり二人は体を動かすためウォーキングに出かけた。
「姿勢を良くし腕をよく振るんだぞ」
郁三はピチピチのジャージでプルプルしたお尻を動かし英介を先導した。後ろから付いていった英介としてはそのお尻の動きがすごくすごく気になっていた。
郁三のウォーキングコースはまず住宅地を抜け、次に瞳ちゃんが通っていた幼稚園の前と朝からお線香のいい匂いがするお寺の前を通った。そして線路沿いの道路に入りその横に並行する歩道を息が切れることなく歩き続けた。運動不足の英介には酷な状況であった。
平然とウォーキングし続ける郁三に英介は声を掛けた。
「先生……少し休憩しませんか……」
「では、あの先にあるベンチで休憩するとしようか」
「先生……あの先と言っても川岸を指していますよ……」
「ああそうだ。あの川岸のウォーキングコースにベンチがある。そこで休憩するぞ」
「……あっ……はい……」
英介の体力バロメーターが底を突きそうになっていた。
「おぅ大丈夫か英介、しっかりしろーーー!」
英介は何とかベンチまでたどり着いた。
横では余裕しゃくしゃくな郁三がゆったりとマイボトルに入れてきた熱いほうじ茶を飲んでいた。