「お母さん、あの人が誰だかわかって入れてるの?」
ため息交じりに由紀子さんが訊ねる。
「わかるわよ。優くんでしょ?」
「え……」
遥香の祖母は、こちらを見るとにこっと微笑む。
どうして。まさかこの前初めて会ったときから気づいていたのか? 彼女は、僕が遥香にしたことを知っていて、あえて僕を家の中に招き入れたのか? いったいなぜ。この家族から僕は忌み嫌われる存在のはずだ。
それなのに、あえて僕を家の中に招き入れ、話をし、今も優しく接してくれている。言葉と感情が一致しない分、由紀子さんより遥香の祖母の方がよほど怖い。
「それじゃあ、なんで入れるのよ」
「優くんはこの家に入りたかったんじゃない?」
遥香の祖母は、僕をまっすぐに見てそう言った。彼女に向けられていた由紀子さんの視線が、今度は僕に向けられる。ひるんでも仕方ない。恐怖心をなんとか拭い、僕は冷静に努める。
「遥香さんに謝りに来ました」
「だから、それなんなの? なんで今さら? 今来られても迷惑なんだけど」
「すみません。皆さんが僕に会いたくない気持ちはわかります。遥香さんが会いたくないというのなら、それも受け入れます。ただ、どうしても三年前のことを振り返ったとき、僕が逃げてしまったことを、ちゃんと遥香さんに謝りたいんです」
「そうやってスッキリしようと思ってんの? 私は全然許す気はない。遥香がどうとか関係ない。私はあなたを忘れたいけど、忘れられないの。遥香を想う度に、あなたを思い出す。あなたにはこの家に近づいてほしくない」
「由紀子! お客さんになんてことを言うの」
それまでずっと黙って聞いていた遥香の祖母が、由紀子さんに詰め寄る。