しかし心理学を学び、自分が何にとらわれているのか、何に縛られているのかが明確になると、私は「もうこれ以上、母の人形ではいられない」「母の期待には応えられない」と思い、「トラウマ返し」をすることを決意しました。

トラウマ返しとは、「従順だった子どもが親に自分の言いたいことをぶちまけたり、親に対して反乱を起こしたりすることで、親から受けた心の傷(トラウマ)を親に返すこと」を指します。(『トラウマ返し 子どもが親に心の傷を返しに来るとき』小野修著 黎明書房)

ずっと親に反抗せずに生きてきた私にとって、トラウマ返しをし、「いい子」をやめて反乱を起こすのは、かなり勇気のいることでした。

本当はガラスの1枚くらい割らなければ、と思っていたのですが、「後片づけが大変になるから」と思いとどまり、実際には、母から何か些細なことで怒られたときに、「今がチャンス!」とばかりに炊飯器を投げ飛ばしただけで終わりました。

そんなときでさえ後先のことを考えてしまう自分の小心っぷりに呆れますが、それでも母にとっては十分にインパクトがあったらしく、以後、母は私に気を遣うようになりました。

トラウマ返しは、本来は、親からトラウマを与えられた子どもが元気に生きていくうえで必要な通過儀礼であり、親はそれに対し、きちんと準備し対応することが必要だといわれています。

ただ、私はすでに40歳を過ぎていましたし、うちの親にトラウマ返しへの正しい対応など、望めるはずもありません。

私がトラウマ返しをしたのは、母に対し「私はもう、いい子をやめる」「子離れをしてほしい」と宣言するためであり、その目的は達成できたような気がします。

もっとも、母には、そんな私の思いなど伝わりません。

突然の娘の反抗に、表向きは態度を変えるようになりましたが、親戚や妹、私の娘たちに対し、ずいぶん私の悪口を言っていたらしく、誤解が解けないまま10年以上も私は悪者になっていました。

 

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