# 8 #
田中可奈子の部屋は閑静な住宅街の中にあった。俺は低層マンションの1階にあるエントランスに入り、集合玄関型インターホンから田中可奈子の部屋番号をテンキーから入力した。すぐに女性の声で
「はい! 田中ですが?」
と反応があった。俺はすかさず
「城東警察署の刑事で小林と申します。お時間よろしいでしょうか?」
とお伺いを立てた。スピーカーから
「今、開けます」
と言う言葉の後に自動ドアが開いた。俺は〈103〉の部屋を目指して歩いて行く。
そして〈103〉のドアの前に立つとドア脇のインターホンを押した。ドアが開き中から女性が顔を出した。俺は
「改めまして城東警察署の刑事で小林と言います。お時間少々よろしいでしょうか?」
と確認すると女性は
「奥田さんという方から聞いてますので……」
俺はアポイントを取ってくれた奥田巡査長に感謝しつつ、いつもの決まり文句を言う。
「申し訳ありません。本人確認のため、お名前をお聞きしてよろしいでしょうか?」
女性はかしこまって
「田中可奈子……21才……会社員です……」
『名前だけでいいんだがなぁ』
俺は心の中で苦笑すると
「ありがとうございます。何しろ『きまり』なものですから」
田中可奈子はやや緊張した表情になった。
次回更新は6月15日(月)、16時30分の予定です。
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