俺はメモを取りながら、顔も上げずに尋ねる。

「他に気づいたことは?」

近藤彩は

「床にも血が飛び散っていたと思います。知佳さんが、生きているか確かめようとしたんだと思います。部屋に入ろうとした時、廊下の方で声が聞こえて慌てて3人で逃げ出しました」

俺はメモ帳から顔を上げると

「廊下から聞こえた声はなんと言っていたか覚えてる?」

近藤彩は

「はっきりとは覚えてないけど……『落ち着け!』とか『連絡したのか?』とか言っていたような?」

俺はいつものように近藤彩の目を見つめた。目は真っ直ぐに俺を見ていた。俺は安心すると

「そして警察に相談に来たわけだ」

と言った。近藤彩は深く頷いた。

「初めて死体なんて見てショックだと思う。不安で眠れないとか憂鬱になったら、また城東警察署に連絡してほしい。できる限り相談に乗るし、カウンセリングも受けることができる」

その言葉に近藤彩は

「ありがとうございます。あの光景が目に焼き付いて落ち着かなくて……バイトも辞めようか考えていたんです」

俺は城東警察署《地域課》の直通電話番号のメモを渡すと

「今日はあんなことがあったのに、いろいろ話してくれてありがとう。これで失礼するよ」

と言い、その場を後にするべく後ろを向き、階段に向かうと背中越しにドアが閉じる音がした。

俺はコインパーキングに停めてある愛車に乗り込み、2人目の女の子の連絡先を見た。そして気づいた。

『この連絡先の順番……城東警察署から近い順になっているのか……』

奥田巡査長の《行き届いた仕事》に感謝し、2人目の住所に向かった。