「この望遠鏡の持ち主はワシじゃない」
「え。どういうことです」
「孫だよ。せがまれてな。でなきゃ、庭を潰すようなまねはせんよ」
「お孫さんに……」
いくら孫の頼みとはいえここまでするだろうか、とわたしは思う。費用はばかにならないだろうし、望遠鏡は立派でも、間違いなく庭の景観を壊しているからだ。
よほど大切な、可愛いお孫さんなのだろう。
「幸せなお孫さんですね」
お追従ではなく本心から思った。優しい祖父に恵まれた孫。絵に描いたように幸福な家族像が頭に浮かんだ。
「だが、孫がこれを使うことはなかった」
「え?」
「基礎工事やスライド小屋の建設なんかに手間取っとるうちに、あいつはいなくなってしまった」
重い話になってきた。悲話なら聞きたくないが、好奇心のほうが勝った。
「おいくつだったんですか」
「え?」
「お亡くなりになったんじゃ?」
「は?」
水口さんは大口を開けて、頓狂な声を出した。
「ばかを言うな。孫は死んでなんかおらん!」
「あら、わたしったら、ごめんなさい」
そんなに怒んなくたっていいじゃない。あの流れだったら誰だってそう思うよ。
「息子の仕事の関係で、今は北海道の何とかいう町におる。帰ることは滅多にないが、来た時のために、手入れだけはしておかなくちゃならん。一緒に新星を見つけようと約束したからな」