「だって名乗ってくれるから……」
「僕はそりゃあ、ウィ*ペディアに個人情報載ってるぐらいだしいいの」
ウィ*ペディアに載っているんだ。
初めて載ってる人に会った。
──というかさっきから会話が彼のペースだ。
聞かれて答えて、聞かれて、その口から吐かれる空気に飲み込まれる。
「ねえ、危ないって言っておきながら勝手なんだけど」
綺麗な顔が語る言葉、飲み込まれる。
「連絡先教えてくれないかな? きみが家に帰ってからアカウントを消す可能性もあるじゃん。やっと会えたから、夢だったって思いたくないんだ」
いやいやそんなの、と両手を顔の前で振った。
畏(おそ)れは多い。恐れも大きい。
「そんな儚いものみたいなこと……」
やっぱりいいね。そう呟いた彼の前髪が揺れた。
それから、そろそろ戻らなきゃいけないから、と立ち上がる。
長身の彼の影が私に落ちて、駅まで送るよと言った。
「星の王子さまは読んだことある? 持ってないなら貸すよ。おすすめなんだ」
いきなり何。なんの話。
「だから連絡先を教えてくれる?」
そう言うと影が動いて、差し出された手元が明るくなった。
「きみと同じ物語の話がしたいんだ」
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