コンドルは、世界各国で投資事業を展開する多国籍企業。日本国内ではバブルのころ流通業界の再編や、二〇〇五年のCapテレビ(CapはCapital=首都=の略)の買収合戦で暗躍した経緯を説明しながら、「先方の狙いを知らなくては手の打ちようもありません」と穏当な意見を吐く。
「じゃあ、お前がやれ」という社長の鶴の一声でこの件は幕を下ろす、ように見えた。
白羽の矢が立った室長は社内各部の若手精鋭を集めて「チームC(コンドルの頭文字)」を結成する。そのなかに諭の野球部同期の角田啓太の名前もあった。
さっそくコンドルの経営実態を調査すると、世界を股にかける資金力、投資先を定める嗅覚、猛禽類を思わせる果断な飛翔力と捕食力が明らかになり、たちまち、端倪(たんげい)すべからざる強敵と見抜く。財務経理出身の角田は数字を並べて詳細なレポートを書く。
ところが上層部の危機意識ははかばかしくない。
「一応、受け取っておく」と言いつつも読んだ形跡がない。株主総会まで一か月もない。
「よし、直談判だ」とばかり、角田はコンドルの日本法人を直撃した。しかし、容易に手の内は明かさない。スパイ扱いで門前払いも同然だった。
ここは正念場だ、と雀鬼角田の本能は告げる。
「わたしには質問に答える権限はない」
「では、権限を持つ人を紹介してほしい」。