【前回記事を読む】高校進学の夢を絶たれ、家業の後継として生きるしかなかった……全日制の生徒とすれ違うたび、消えない惨めさを感じ……
第1章 苦難の少年時代
働きながら学ぶ
その数年後のある日、恩師である田中先生ご夫妻を招き、群馬県の谷川温泉で同窓会を開く事になった。先生は大層喜び、教師になって良かったとしみじみ語った。あの時の恩師の嬉しそうな笑顔は、忘れる事ができない。素晴らしい母校、素晴らしい恩師、そして素晴らしい学友達。一郎の生涯を通じての誇りである。
第2章 青春の旅立ち
家出
4年間、机を並べて勉強した仲間達とも別れて、一郎はしばらくの間、家業の農作業に従事しながら、ただ無為に毎日を過ごしていた。
親しい仲間達とも別れたせいか、何をするにも心を集中する事ができない。空しさだけが残る。楽しい事や辛い事など、さまざまな思い出を数えきれないほど残して去って行った仲間達。一郎はポツンと一人取り残されたような、言いようのない寂しさに包まれた。
関東平野の片隅で、一人ぼっちになってしまった一郎。幼い頃から朝夕眺め続けて来た浅間の雄姿に向かい、夢をなくしたこれからの人生、どうしたらよいのか教えてくれと問いかけてみたが、返答はない。
一郎は20歳の春を迎えていた。この大地の片隅でこのまま朽ち果てるのか、せっかくこの世に生まれて来たというのに。頑張って生きなければと思っているのだが、この先、進むべき方向が見いだせない。故郷の大地に生きる夢を無残にも打ち砕かれて、傷心の日々を送る一郎。学友とも別れて早や一年が経過していた。
それから2カ月ほど過ぎた麦秋のある日、「百姓に学問はいらない」と言う父芳正の一言に未来への夢を絶たれ、悲しみの淵を彷徨う一郎は、ここには俺の生きる道はないと思い詰めていた。新天地を求め、誰にも気づかれないように身の回りを整理して、家を出る決意をした。
空っ風の吹きすさぶ田圃の中で、小さな芽を冬の空に向けて生命を主張していたあの小さな麦達も、今では肌色に熟した穂が刈り入れの時を待っている。その真ん中を夕焼けに染まった一本の農道が続く。悲しいまでに美しい麦秋の農道を、友人のバイクに跨った馬鹿息子が疾走する。ついに一郎は家出をしてしまった。
天地のすべてが希望に向かっているというのに、俺は一人ぼっちだ。空しさが胸の中を走り抜けて行く。父は自分の意見など聞いてはくれまい。このままでは俺の人生は終わってしまう。そう思い詰めた一郎の若さが暴発してしまった。
なぜあの時、父と胸襟を開いて納得のいくまで話し合いをしなかったのか……。今となっては取り戻す事のできない父親との貴重な時間。一郎は人生の中で大切な時を失ってしまった。一郎にとって一生の不覚。血を分けた父と子なのに……。
あの時の父の悲しみはいかばかりであったか、想像するたびに胸が痛む。82歳の今なら痛いほど分かる。子を持って初めて知る親の心とは、この事だ。