俳句・短歌 歴史・地理 歌集 歴史 2020.10.07 歌集「風音」より三首 歌集 風音 【第10回】 松下 正樹 何気ない日常にある幸せを探しに。 優しい風を運ぶ短歌集を連載でお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 夕闇にあばたの多き蟇蛙 前足つっぱりわれを睨めり 花菖蒲 蕾は尖りとぶかたち 開かんとする力溜めたり 添へ棒に胡瓜は蔓をあずけたり つらなる黄花夏うら若し
小説 『眠れる森の復讐鬼』 【第7回】 春山 大樹 顔面まで焼けただれ、身元不明。いじめ被害の女子高生は、なぜあの公園で灯油を被ったのだろうか。 二〇一四年三月二十三日、月曜日の昼休み、急に教室が騒がしくなった。スマホに衝撃的なニュースが流れてきたからだ。その日の未明午前三時頃、山本公園で火災発生の通報があり消防隊が駆け付けたところ、人が炎に包まれて倒れているのを発見。病院に救急搬送されたが全身に火傷を負っており、意識不明の重体。近くに灯油を入れていたポリタンクが落ちており、焼身自殺を図ったものと思われる。顔面を含め全身が焼けただれている…
小説 『綻ぶ糸を手繰り寄せ[注目連載ピックアップ] 』 【第7回】 ホエラニア 殺してやる...背中でもさすってやろうとした途端、お前の体が跳ね、僕の手が振り払われる。隻眼が僕の目を貫き、僕に襲いかかり、確かにこう言った。 【前回の記事を読む】そこから血と鼻を突く臭いがして、ゴミ袋を見やる。お前の服が死んだねずみの塊みたいに固まっている。僕はお前の方を見ていたが、お前は僕の方など一度も見なかった。僕はどうにも苦しくなって、お前の声を聞き出そうと声をかける。「痛くなかった?」言葉が、親友同士なら決して生まれないであろう空間に飲み込まれた。「足も、診てもらった?」ぽっかりと空いた人一人分の間が、壁となって言葉を吸い込ん…