【前回の記事を読む】「弁償します…。お金は…お年玉が貯金箱にまだ少し残ってるから」と言う少年。少女の目には涙が浮かんでいて…
ホームランとフォーマルハウト
「どうしてって言われても……」
「この子たちの身代わりに叱られるつもりだったのかね」
「いえ、そんなつもりでは」
「それでは、あの子たちのためにもならんぞ」
「そうですけど、ですから、そうではなく」
相手の誤解を解く巧みな話術があれば、といつも思う。はっきり『否』と言い返せないこの優柔不断な性格も、自分自身嫌いなところだ。
「でも、窓ガラスくらいならいいかな、みたいには思っていました」
「弁償しようと?」
「え? まあ、そうですね」
「変わったお人だね、あんたも」
「すいません」
「謝ることじゃない」
ジャイアンツの少年が鼻をすすりだした。女の子は必死の形相で泣くのを堪えている様子だ。
「おねえさんもごめんなさい。悪いのは僕たちなのに」
「あなたたち……」
わたしはなんだか、この子たちが急に愛おしくなってきた。
「代わりに叱られてると思ったの? 心配しなくて大丈夫、こちらとお話ししていただけよ」
おじいさんが優し気な目で子供らを見つめている。彼の年齢なら、この子らはたぶん遅い孫くらいの年頃になるのだろう。
「もしかしたら、これから𠮟られるのかな?」
可愛い援軍を得て気を強くしたわたしは、ちらりと隣に目をやった。味方が増えたことで、萎縮していた筋肉がずいぶんと和らいだみたいだ。
「なにも、ワシは」
渋い顔でおじいさんが呟いた。
「あんたに怒っとるわけじゃない」
子供たちの中に、さっと緊張感が走った。泣いている女の子の顔が不安げに歪む。ジャイアンツの少年の背筋が、ピッと伸びるのかわかった。
「心配せんでいい。君らを叱るつもりもないよ」