時間が時間とはいえ、同じアパートの住人なら直接会って話をすればいい。なぜ山城が、と二人は顔を見合わせた。ややあって電話に出た良三は血相を変えた。

「お、おい。何があったんだ良三」

「う、ウチの部屋から黒い煙が漏れてるって……」

「……は?」

「火は見えねぇけど火事じゃねえのかって山さんが……。呼び鈴鳴らしても誰も出てこねぇから心配んなって俺に電話を……」

要領を得ない説明をしながらハッとした良三は震える手で若菜に電話を掛けたが、コール音が虚しく響くばかりだった。

 * 数日後

多くの通院患者と見舞客で賑わう町の総合病院。その一階ロビーで課長は己を呼び出した景浦と対峙していた。

「噂には聞いていたが見るのは初めてだ。しかし思ったより若いな。歳、いくつだ」

「お言葉ですが、その質問には答えられません」

「そうか。いや、気にしないでくれ。それより場所を移そう。ここはやかましい」

ゆったりとした足取りの景浦はひと気の少ないテラスに課長を連れだした。冬特有の冷たく乾燥した空気が呼吸するごとに鼻と喉に刺激を与える。

「景浦さん」

「なんだ?」

「若菜ちゃんはどちらへ?」

「聞いても無駄だ。ずっとJICU(小児集中治療室)にいる。当然面会もできん」

「……」

次回更新は5月23日(土)、11時の予定です。

 

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