【前回の記事を読む】臨月を迎える頃に焼き殺された代理母…しかし、黒焦げの中にいた胎児の状態は、全くの無傷で…

サイコ5――テレポート怪盗

「結局、戸田徹が発火した原因は未だに不明。もちろん、火器の持ち込みは一切なかった。一課も皆頭を抱えているよ」

5月19日月曜日、事務所を訪れた鍬下が言った。

「じゃあ、まさか、あの西須(さいす)悠雅が口封じのためにパイロキネシスを使って戸田君を焼き殺したって言うんですか?」

麻利衣(まりえ)が訊いた。

「分からない。だけど、そう信じるしかないような事件が続いている。君は西須を見たんだね」

「はい。実はあの時、こっそり写真も撮ってました」

彼女はスマホの写真を鍬下に見せた。

「これが西須悠雅。だけど、放火殺人の証拠がなければ逮捕するわけにもいかない。実は今日からしばらく休暇を取って、美瑛に行ってみようと思っている」

「美瑛に? どうして」

「君のお父さん、那花(なばな)吉郎が建てた国際超能力研究所だが、そこに何か秘密が隠されているような気がする。そこで働いていた人もまだ美瑛にいるかもしれない。ちょっと調べてみようと思っている」

麻利衣は自分の嫌な過去が掘り返されるような気がして穏やかではなかった。

「何か分かったらまた連絡するよ」

麻利衣は鍬下を玄関まで見送ったが、賽子(さいこ)はセルフネイルに夢中で気にも留めていないようだった。

麻利衣がドアを閉めようとすると、茶色のロングヘアでスーツを着た女性が入れ替わりにやってきた。賽子に引けを取らぬほどの美人である。

「あの、こちら、タリス超能力探偵事務所でしょうか?」

「はい、そうですが」

「私、こういう者です」

差し出された名刺には『ルクスス・エキシビション リスクマネジメント部長 石原朋子』と書かれていた。

「あなたが河原賽子(かわはらさいこ)さんですか?」

「いえ、どうぞ中に」

ソファへと案内された石原は賽子に早速用件を切り出した。

「弊社は明後日から富裕層向けの宝石展示会を企画しています。その中で目玉なのが、『ピンク・ムーン』という5000万ドルの価値があるピンクダイヤで、今回特別に香港から借り受けることができました。現在、当社の高セキュリティ保管庫に保管しています。ところが数日前、会社にこの手紙が届いたんです」

石原は一通の手紙をテーブルの上に開いた。

『5月19日と20日の境目の午前0時きっかりにピンク・ムーンを頂きに参上する。

ミスターS』

「犯行予告……まるで怪盗ルパンみたいですね」

麻利衣が言った。

「ええ。でもネット上ではこのミスターSという人物は今、ルパンよりも話題になっているんです。絶対に侵入不可能な警備体制を掻い潜り、犯行予告通りに世界中の貴重なお宝を次々に盗み出しているとか。実はあのルーヴル美術館の名画モナ・リザも既に彼に盗まれていて、現在展示されているのはレプリカだと噂されています」

「ええ? まさか」