「私もまさかと思いました。モナ・リザは1911年に一度盗難に遭っていますが、あの時は開館時間に入館し、清掃用具入れに隠れていたイタリア人清掃員が閉館後絵を盗んでコートの下に隠して逃走したんです。
現在は、フランス政府のヴィジピラートという国家安全保障プログラムにより厳格なセキュリティチェックが行われていて、映像解析技術と連動した監視カメラで24時間監視されており、もちろん警備員も多数配置されていて、とても誰にも気づかれずに絵を盗み出すなど不可能なはずでした。
しかし先日、美術館の職員と偶然知り合いになったので確認したら、やはり本当にモナ・リザは盗み出されてしまったようなんです」
「信じられない……」
「それで心配になって警察に相談したんですけど、『いたずらでしょう』と言われてまともに取り合ってもらえなかったんです。もちろん、当社の保管庫も最新のセキュリティシステムで守られており、警備員も増やしました。
でも相手はあのルーヴル美術館の警備を突破した人物です。それで小佐々家の事件を解決したことで御高名な河原さんを頼って参った次第です」
「あの事件ってもうそんなに知れ渡ってるんだ……」
その時、ずっと目を閉じたまま話を聞いていた賽子が急に口を開いた。
「テレポーテーションだ」
「は?」
「説明するまでもないが、離れた場所に一瞬で移動する能力だ。テレポーテーションでなければ、ルーヴル美術館の厳重な警備を掻い潜って絵を盗み出したことを説明できない。だが、これは全ての超能力(フォルス)の中でも最上級の能力を要する。
なにせ時空を歪めて離れた2点を一点に引き寄せなければいけないのだからな。これができるのは世界広しといえども私と西須悠雅だけだ」
「また始まった。じゃあ、ミスターSは西須悠雅だって言うんですか? 確かにイニシャルは一致してますけど」
「可能性はありうる。やつは金などに興味はないだろうが、神撰の財源のために指示されてやった可能性はある」
「とんでもなく低い可能性だと思いますけどね」
「ミスターSが超能力者だというのなら、やはり彼からピンク・ムーンを守れるのは河原さんしかいません。今晩、どうか保管庫に来てピンク・ムーンをミスターSから守っていただけないでしょうか」
石原が頭を下げた。
「相手が悠雅となると強敵だ。報酬は1000万いただきます」
「1000万なら安いものです。お引き受けいただき、ありがとうございます」
「えっ、いいんですか? こんな人に1000万も払って」
麻利衣はすっかり呆れてしまった。
次回更新は5月19日(火)、21時の予定です。
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