【前回記事を読む】「実家暮らし」と言う彼女をタクシーで家まで送った…後部座席で身体を寄せてきた一瞬、いい匂いに爆発しそうになり…

瞳に一目ぼれ 

英介のオフィスは菱井ホールディングス自社ビル三十階ある中の二十七階にあった。

「おはようございます。風間部長」

同じ経営企画部の課長でプロジェクトリーダーである赤尻が声を掛けてきた。

「昨日はお疲れ様でした。私も正直参加したかったのですが残念ながら先の交渉がありましたので、次回あれば参加させていただこうと考えております」

「悪いな先に勉強させてもらって」

「いえ。また話を聞かせてください」

「で、何かあったのか」

「はい、早速なんですが昨日、老舗メーカーのTAKABUNEと毎年秋に行われる協同プロジェクトについて意見交換をさせていただきました」

「毎年、東京お台場で有名アーティストに出演を依頼して花火で彩るあれだな」

「はい」

赤尻は真剣な表情で英介に提案をした。

「ここ五年来客数及び売上高、そして何よりもメーカーの影響もあってか小売店の売上も年々減少傾向をたどっています。このままでは協同プロジェクトに投資している我社にも影響を及ぼしかねないと思われます。

昔ながらの付き合いそして老舗ですが、ここはそろそろ見切りをつけ、ここ三年で知名度も売上高も上昇傾向にある日松との交渉に切り替えてはどうかと考えております」

「そうだな。確か契約は今年で満期を迎えるはず。時間がない。すぐにでもTAKABUNEとの最終調整に入ろう」

英介は厳しい眼差しで赤尻に言った。

昼時、英介は瞳からLINEが入っているのを確認した。

『昨日はご馳走様でした。特にあそこのグラタンは格別美味しかったです。またご一緒させてください。では土曜日のドライブ楽しみにしていますね』という内容であった。

英介の答えはもちろんYESであった。

社内食堂で日替わりランチを食べていると隣に三田が座ってきた。

「さてはお前セミナーの内容以外に何か収穫があったな」

三田は図星であった。

「やはりお前には隠し通せないみたいだな」

英介はご飯を口一杯に入れ三田を見た。

「実はかなり若い美女と劇的な出会いをしたんだ」

三田は飲みかけていた水を吹きかけた。

「英介。やるじゃないか。俺、本当お前のこと心配していたんだぜ」

三田は英介の肩に腕を回し喜んだ。

「で、いつ結婚するんだ」

「まだそこまで進展してないよ。昨日会ったばかりだよ」

味噌汁をすすりながら英介は言った。

「そうだったな。経験者として何かあれば相談にのるからさ、気軽に相談してくれ」

三田はチキンカツを頬張りながら言った。

英介と三田が見える席にスーツを着たトムの姿があった。トムはうまそうにチキンカツを口に入れ目を光らせていた。