【前回記事を読む】母が亡くなって1年、一周忌の集まりで母にまつわる“ある物”を手渡した。伯母はそれを受け取ると涙ぐんで… 

第十七章 新しい日々

母が亡くなってから、2年が過ぎた。私の生活は、少しずつ変化していた。

仕事では昇進し、責任のある立場になった。忙しい毎日だったが、充実感があった。プライベートでは、新しい趣味を始めた。母が好きだったガーデニングだ。

庭の花壇を手入れし、母が育てていた花を引き継いで育てた。季節ごとに、色とりどりの花が咲いた。

「お母さん、見て。チューリップが咲いたよ」

花が咲くたびに、私は仏壇に報告した。

「今年もきれいに咲いてくれた。お母さんが育てた株から、また新しい花が咲いたんだよ」

花を見ていると、母を近くに感じられた。母が愛した花は、母がいなくなった後も咲き続けている。命は受け継がれていく。そう思うと、少し救われた気持ちになった。

ある日、私は認知症カフェというものに参加した。

認知症の人とその家族が集まり、情報交換や交流をする場だ。母が生きている間に、もっと早く知っていればよかったと思いながら、私は会場に向かった。

参加者は、認知症の当事者と、その家族や介護者だった。様々な年齢、様々な境遇の人がいた。私は自己紹介で、母のことを話した。

「母は2年前に亡くなりました。軽度認知障害と診断されてから、約2年間、一緒に過ごしました」

参加者たちは、真剣な表情で聞いてくれた。

「大変でしたね」

隣に座っていた女性が言った。彼女も、認知症の母親を介護しているという。

「ええ。でも、後悔はしていません。母と過ごした時間は、かけがえのないものでした」

「どうやって、気持ちを保っていたんですか?」

彼女の質問に、私は少し考えて答えた。