その夜、亮介は静香を呼んだ。
「亮介、相談って何?」
「うん。お客さんに頼まれて今度、家族旅行のスナップ写真を撮ることになったんだ。一人だとちょっと大変なので手伝ってもらえないかと思って」
「へえ。写真館ってそこまでやるんだ。それで、どこに行くの?」
「鎌倉と江ノ島だって。これからちょうど良い季節になるしね」
「なるほど、鎌倉と江ノ島。悪くないね。最近行っていないし。手伝うって何をすればいいの?」
「まあ、カメラを2、3台持っていくから、一緒に持ってもらいたいんだけど……。正直に言うと、他人の家族の中に一人でいるのは落ち着かないので、静香についてきてほしいんだ」
「何だ。そんなことか。いいよ。ついていってあげる。私も写真撮るよ」
「助かるよ。これで少し気が楽になった」
「この貸しは高いよ。今度、おいしいものを食べに連れていってもらおうかな」
「わかりましたよ、お嬢様。仰せの通りにいたします」
約束の日、亮介は車を出すと店の前で静香を待った。
静香は、白いブラウスにジーンズ、紺ブレといういで立ちで現れた。バッグの他に手に籠をぶら下げている。
「何を持ってきたの?」
「お弁当。朝から張り切っちゃった。亮介の分もあるよ」
「ええっ。遊びに行くわけじゃないぞ」
「まあ、いいじゃない。朝が早いからきっと途中でお腹がすくよ。車で移動中は二人きりなんだから、つまみながら行けばいいじゃない。そう思ってサンドイッチにしておいたよ。まあ、私的には今日はドライブ気分なんだけど」
静香はその言葉通り、旅行気分を満喫しているようだった。