【前回の記事を読む】「父がお世話になりました」と来店した女性…遺影を受け取るかと思いきや、写真には目もくれず“ある相談”を切り出してきて… 

2、毎年遺影を撮る老人

亮介は弱っていた。自分はスタジオで肖像写真を撮っているが、スナップ写真という点では素人だ。プロのカメラマンのようにはいかない。

「もちろん、日当のようなものもお支払いしたいと思います。受けていただけないでしょうか」

「はあ。私は写真館をやっておりますが、スナップ写真となると、小学校の催し物くらいであまり自信がありません。満足いただける写真が撮れるかどうかも正直なところ怪しいのではないかと思います。せっかくのご旅行ですから、私の知り合いを紹介させていただきたいのですが、いかがでしょうか」

「ありがとうございます。間宮さんがどうしても駄目とおっしゃるのであれば、カメラマンをご紹介いただきたいのですが、父は間宮さんに撮っていただきたいと申しておりますの。考えていただけないでしょうか」

旅行のスナップ写真。家族の大事な1日になるかもしれないのに、自分なんかでいいのだろうか? 亮介は不安そうな表情を浮かべた。

「あまり真剣にお考えにならないで。私たちが普段撮るようなスナップ写真程度のイメージなんですよ。無理でなければお願いできませんか?」

亮介は観念した。

「わかりました。それでは、やらせていただきましょう。ただし、初めての経験ですので、あくまでも実費程度の費用だけいただくということでよろしいでしょうか? アルバムづくりはお手伝いさせていただきます」

「まあ、本当に? 父が喜びますわ。それではぜひお願いします」

奈津美は嬉しそうに言うと、日程の候補を出した。亮介は自分の予定と照らし合わせ日程を調整した。