【前回の記事を読む】見積もり中、店内をキョロキョロと見回していた依頼主の男……見積書にさっと目を通すと“3回”無言でうなずき、こう言った……

1、プロローグ

「商店街も店主の高齢化が進んでいて困ったものだ。個人商店も受難の時代が続いているから、子供たちが店を継ぎたがらない」

「まあ、気持ちはわかりますよ。僕も店を続けるべきか悩んでいます。近所にチェーン店ができたら勝ち目がないですもん」

静一は、しばらく考えていたが、亮介のほうを見て思い出したように話し始めた。

「お父さんの孝介さんは、写真館にとても情熱を注いでいたよ。街の記録を残すんだと張り切っていた。お父さんもおじいさんから店を受け継いだときにはいろいろと悩んでいたと思う。でも、店を立派に切り盛りし、組合でも中心となって活動してくれたんで、私もお父さんのことを心から尊敬していたよ。亮介君も覚えているだろう」

「はい。そうですね」

「勝手なことを言わせてもらえば、亮介君には間宮寫眞館をこれからも続けてもらいたいな。街の記録もどんどん残してほしいと思う」

「ありがとうございます。そうですね。弱音を吐くのはまだ早いので頑張ります」

「亮介ちゃん。おじさんの言うことだからあまり気にしないでね」

「そうだな。余計なことを言ってしまった。亮介君、忘れてくれ」

上村家で団欒を楽しみ、そろそろ亮介はお暇(いとま)することにした。

店に戻ると静香がついてきた。二人は店のソファーに座った。

「今日はごちそうさまでした。カニ鍋おいしかったよ」

「そう? たまには大勢で夕飯食べるのもいいでしょ?」

「うん。おじさん、本音は静香に店を継いでもらいたいんじゃないの? 僕に写真館を続けろって言っていたけれど、本当は静香に言いたかったんだと思うよ」

「そう? いつも楽器店は俺で終わりだって言っているけど」

「本音は違うと思うな」

「そうかな。まあ、心の中では未練があるのかもね。今日は少し酔っていたみたいだから」

「それはそうと、青年会の話は、何か考えているの?」

「いや、まだ。近々お呼びがかかるかな。亮介も助けてね」

亮介は軽く頷いた。

「あんまりやる気がなさそうね。まあいいや。それじゃ帰るね。お休み」

店を出ていく静香を目で見送ると、亮介はソファーに深くもたれかかった。

「これから、ねぇ。どうなることやら……」