【前回の記事を読む】ひだまりの暖かさが染みる中、海の見える公園で昼食を食べた。紙袋からハンバーガーを取り出して、冷えたコーラで流し込む……

1、プロローグ

「それで、記念撮影はどういったものをお考えでしょうか」

男性は、会社が30周年になること、従業員は25人くらいで、会社の大会議室でセレモニーを行った後、そのまま社旗を背に記念撮影をしたいと話した。

亮介はオーダーシートに記録し、撮影日時と会社の場所を書き取った。

「撮った写真は、会社の皆さんに配られますか? 台紙に写真を入れて配られるのが一般的ですが」

「台紙に社名などを入れることは可能ですか?」

「大丈夫です。台紙のカタログはこちらになります」

「なるほど。それじゃ、この台紙にしようかな。見積もってもらっていいですか」

「ありがとうございます。少々お待ちください」

亮介はカウンターに入り、計算を始めた。その間、男性はコーヒーを飲みながら店の中を見回している。

「古いお店ですね。良い雰囲気だ」

「恐れ入ります。祖父が始めた店なのですが、もともとは質屋だったそうです。建物全体が古いので手入れが大変です」

「ああ、そうですか。スタジオもありますか?」

「はい。2階の部屋を改装してスタジオとして使っています。……お待たせしました。お見積もりはこちらになります」

男性は、見積もりにさっと目を通すと、三度ほど無言で頷いた。

「わかりました。では、これでお願いします」

「ありがとうございます。それでは、このオーダーシートをご確認いただいて、よろしければ住所とサインをいただけますか」

男性は老眼鏡をかけると、オーダーシートに目を通し、住所とサインを書き入れた。

「それでは、当日11時ごろ伺うようにいたします。よろしくお願いいたします」

「ああ。よろしくお願いします。コーヒーごちそうさまでした」

夕方6時が過ぎて、亮介は店を終える準備を始めた。

今日はこれから来客の予定もないので遅くまで店を開ける必要はない。店の鍵をかけてから掃除をするとちょうど良い時間になり、昼間に買ったワインを持って上村家に行った。