「こんばんは」

「あら、亮介ちゃんいらっしゃい。さ、どうぞ上がって」

佳子がいつも通り明るく迎えてくれた。店先で会話することはあるが、顔を合わせるといつでも明るく声をかけてくれる。家に上がるのは久しぶりだった。

佳子に促されて玄関を上がると、出迎えにきた静香にワインを渡した。

「あら、白ワイン。ありがとね。冷やしておくね」

静香はそう言ってワインを受け取った。亮介は静香の後について廊下を進み、リビングに入った。

大きな液晶テレビの前にソファーが二つ向かい合わせに置いてある。静一が片方のソファーに座ってテレビを見ているところだった。

「おお、亮介君。久しぶりだね。食事の準備にもう少し時間がかかるみたいだから。さ、こっちに座って」

静一は、空いているソファーに座るように促す。亮介は挨拶をすると、促されるままソファーに腰を下ろした。静一はテレビを消すと、亮介のほうに向き直った。

「お店のほうはどんな塩梅かな」

「いやぁ、近頃は記念に写真を残すという風習が薄れてきて大変ですよ」

「学校や法人からの依頼はあるの」

「ええ。それが頼みの綱です。今日も会社の記念撮影の依頼がありました」

「そう。今は大変な時代だ。商店街はどこも似たりよったりだから、活気を取り戻すのに何か良いアイデアはないかな? 今日も会合で夏祭りについて議論したんだが、年寄りでは新しい発想が浮かばなくてね。青年会に任せてみようということになったよ」

「まあ、青年会で気の利いた案が出るかわかりませんけどね」

亮介はそう言いながら、食事の準備を手伝う静香のほうを見た。静香は手を動かしながら話を聞いていたようだ。

「亮介、自分は関係ないと思っているのね。仲間に引きずり込んでやるわ」

亮介は年齢的には青年会の対象だが、店主なので組合の正規会員になっている。それでも、たまに青年会に加わって活動したりもしていた。

「準備ができたのでこちらに来てください」

佳子が二人に声を掛けた。大きめの鍋が用意され、中には具がたくさん入っていた。

鍋の3分の1をカニ足が占めている。カニは食べやすいように切れ目が入っていた。白菜、白葱、人参、椎茸と色鮮やかなカニが食欲をそそった。

佳子が取り皿に具を取り分けて亮介に渡した。

「いっぱい食べてね。カニもたくさんあるから遠慮しないで」

「亮介、ビール飲む?」

静香が、ビール瓶を持って亮介のコップに注いだ。

「ありがとう。では、いただきます」

食事が大体終わると、静香がコーヒーを淹れて出した。四人は食卓についたまま雑談を続けていた。

 

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半身不随の妻を残し、毎年“自分の遺影”を撮りに行く79歳の父……家族が止めても通い続ける理由を、父は明かすことはなく……

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