「ええ」

私はうろたえながら頷いた。

「じゃあ、しばらくあたってて。僕、ベッドの中を温めてあげるから」

ネコニャは部屋に入り、ベッドに潜り込んだ。私は言われるままファンヒーターの前に座った。

落ち着けーぇ。

私はおなかの底の方で唸り続けていた。

「そろそろいいよ」

ネコニャの声に、心臓が口から飛び出すかと思った。

「は、はい」

私は自分で言うのも何だけれど、ものすごいスピードで反応したと思う。素早く立ち上がり、ファンヒーターを消してベッドに近づいた。

「ん、もう大丈夫だよ」

ネコニャはあくびをしながら、掛け布団をめくり上げた。

そんな簡単に招き入れないでよぉ……。

私がおずおずと彼の懐の中に入ると、ネコニャは背後から身体に両腕を回して擦り寄ってきた。

きゃー! 抱かれちゃったぁ。どうしよう。このまま身動きしないでいるべきか、それとも何か反応した方がいいのかしら? あっ! ファンヒーター消しちゃったぁ。寒いよねぇ。

などと考えている間も、彼はごそごそと擦り寄っていた。

「温(あった)かいでしょう。僕、足も熱いよ。くっつけたら少しは温まると思うよ。んじゃ、おやすみ」

そう言ったと思ったら、もう頭上から寝息が聞こえてきた。

「え?」

私は自分の胸の前で組まれたネコニャの腕に両手を掛けて振り返った。

「眠っている」

私は呆然とつぶやいた。

うそだー!と心の中で叫んだ瞬間、どっと気が抜けた。

猫だ。やっぱり猫を拾ったんだ、私は。男を引っ張り込んだんじゃない。

身構えていた分、正直がっかりした。でも明らかに八歳近く年下の少年に、抱いてもらえなかったと怒るのも大人気ない。ここはやはり、猫だと割り切って付き合わないと、自分が惨めになると思った。

それ以来、私とネコニャの関係は飼い主と猫になった。

私はネコニャに家中を開放した。どの部屋に入ろうが、私は気にしなかった。ただ一室を除いて……。

私は十代後半をドイツで過ごし、その間ほとんど帰国しなかった。たまに帰ってきても、自分の部屋と、居間とピアノ室があれば、それで充分事が足りていた。だから二階の一番東の部屋がどうなっているかなんてことは、まったく興味がなかった。私は勝手に母の趣味の部屋だと思い込んでいた。

次回更新は4月25日(土)、14時の予定です。

 

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