きょう、父は病院へ行き、そのまま再入院した。

付き添(そ)いで病院に行った母は一人で帰ってきたが、「じいじ、どこに行ったの?」とまるでわかってなかった。

大倉山までの帰り方を父が描いて渡したメモには〈815号室〉と書いてあったから、それが父の病室番号なのだろう。

母が迷子にならず、病院がある国際展示場駅から二回も乗りかえて帰宅したことは奇跡に近かった。

新しい抗がん剤のせいでこの一週間、父はほとんどお粥しか食べていなかった。

相当体力が低下しているだろうから、入院は適切な判断だった。

父に保険証の場所を電話で聞いたら、「わかんないよ」と言われた。

母に代わってもらったら、「保険証がなかったら、困るだろ!?」と怒鳴られ、電話を切られた。

家中探してみたが、保険証は見つからなかった。父から連絡を受けた姉のゆっこが電話をしてきてこんなことを言った。

「整理整頓ができてないから、何でもどっかいっちゃうんだよ。とにかく家中が汚なすぎだよね。そろそろ行政にお願いして、ヘルパーを入れたほうがいいよ。やっぱり誰か人を入れないとだめだよ。それと、さっちゃんは週一回でも二回でもデイサービスに行ったりしたほうがいいね」

「……デイサービス」

「その前に区役所に相談に行こう。デイサービスのお迎えが来れば、楽しく行けるようになるよ。友だちのお母さんなんて、お昼ごはんも出るからって愉(たの)しんでいるよ」

結局、父の保険証は見つからなかった。

区役所に問い合わせたら「銀行預金の通帳を持ってきていただけたら、仮の保険証を発行いたします」とのことだった。

 

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