翌日父は城使として江戸城に赴き、老中に同じことを伝えた。藩の世継ぎ交代は幕府に伺いを出すことになっていたからである。

直元の死後二十日ばかり過ぎた二月十七日、徳三郎は同じ小姓仲間の今村忠右衛門、杉原守信、加藤彦右衛門、藤田勝右衛門、勝野五大夫、三浦九右衛門、鈴木権十郎らと共に呼び出され、江戸家老の長野に新しく世継ぎとなった直弼の小姓を務めるように言い渡された。

「ただし」と、ご家老は付け加えた。

「大殿様の御小姓としては今後も精勤するように。直弼様の小姓としては、新たに西堀源蔵、宇津木蔵人、大塚正恭、西尾英之助、石居三郎左衛門が加えられる。直弼様は明日おつきになるので、揃ってお迎えするようにせよ」

こう言った後で、ご家老は妙な言葉を付け加えた。

「なお、若殿様の生活ぶりの中で何か気付くことがあれば、わしに伝えるように」

部屋を出ると非番の小姓たち一同の足は自然と屋敷の外に向かっていた。

「お堀端を歩いてみるか」と一人が言った。二月中旬という季節ではあったが、今日は快晴で風もなく、空気も比較的暖かく感じられた。

門を出ると彼らの足は堀端に沿って半蔵門の方向に向かっていた。

 

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