【前回の記事を読む】飛び起きて枕元の刀を掴むと、盗人の男は頭を畳に擦り付けていた。「お許し下さるご器量に、心がとろけてしまいました。」「朝飯前、ということか。それにしてもどういう了見だ。何の用だ」「へえ、お願えでやす。どうかこのあっしを若様の家来、いえ家来なんてとんでもねえ。飯炊きでも、草履取りでも、小間使いでも何でもいたしやす。あっしは、物心ついてからこの方、人様のものをかすめ取ることしか知ら…
[連載]岐路
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小説『岐路』【第7回】田中 建彦、田中 充恵
命を救ってもらったお礼に「家来にしてくだせ!」と現れた盗人。だが…「夜中に寝室に忍びこむとは。出て行け!」
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小説『岐路』【第6回】田中 建彦、田中 充恵
飛び起きて枕元の刀を掴むと、盗人の男は頭を畳に擦り付けていた。「お許し下さるご器量に、心がとろけてしまいました。」
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小説『岐路』【第5回】田中 建彦、田中 充恵
「この野郎!」――彼の手が何か異様なものに触れた。荒ててそれをつかみあげると、それは他人の手だった。
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小説『岐路』【第4回】田中 建彦、田中 充恵
「徳三郎、十日後には江戸にお発ちなさい」父だけでなく十八の息子も手放すことは、母の表情をどことなく寂しくさせた――
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小説『岐路』【第3回】田中 建彦、田中 充恵
「余は朝廷にお味方しようと思う」十八歳の藩主は決然と口にした。それは彦根藩井伊家が徳川家に反旗を翻した瞬間だった
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小説『岐路』【第2回】田中 建彦、田中 充恵
武士として命を賭けて行動しなければならない時、いったい誰を選ぶのか……? 忠を取るか孝を取るかの二択が迫られる。
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小説『岐路』【新連載】田中 建彦、田中 充恵
親徳川派は約六割、新政府側は約四割と真二つに割れている彦根藩。藩論を統一するための会議を開くことになり…