【前回の記事を読む】「徳三郎、十日後には江戸にお発ちなさい」父だけでなく十八の息子も手放すことは、母の表情をどことなく寂しくさせた――朝食を終えると二人はまた歩き始めた。伊吹山を左に眺めながら、関が原を抜け、赤坂で宿をとった。赤坂は天下分け目の戦いと言われた関ヶ原の戦いを前にして東軍が集結した場所である。出発前は、関が原の古戦場跡や赤坂の東軍集結場所の跡にも立ち寄りたいと思っていたが、一日目はか…
[連載]岐路
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小説『岐路』【第5回】田中 建彦、田中 充恵
「この野郎!」――彼の手が何か異様なものに触れた。荒ててそれをつかみあげると、それは他人の手だった。
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小説『岐路』【第4回】田中 建彦、田中 充恵
「徳三郎、十日後には江戸にお発ちなさい」父だけでなく十八の息子も手放すことは、母の表情をどことなく寂しくさせた――
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小説『岐路』【第3回】田中 建彦、田中 充恵
「余は朝廷にお味方しようと思う」十八歳の藩主は決然と口にした。それは彦根藩井伊家が徳川家に反旗を翻した瞬間だった
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小説『岐路』【第2回】田中 建彦、田中 充恵
武士として命を賭けて行動しなければならない時、いったい誰を選ぶのか……? 忠を取るか孝を取るかの二択が迫られる。
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小説『岐路』【新連載】田中 建彦、田中 充恵
親徳川派は約六割、新政府側は約四割と真二つに割れている彦根藩。藩論を統一するための会議を開くことになり…