【前回記事を読む】個人の尊重こそ憲法を支える第一理念。しかし基準が曖昧で、世界で広がる分断や対立、繰り返される差別・虐待の前では虚しく…

第1章 憲法が保障する権利

切り札中の切り札としての権利

以上の議論のまとめとして、憲法に内在するあるいは定めがある、個人の尊重、個人の人格の根源的平等性、平等権、及び、差別されない権利という、四つの価値観・原理あるいは規範のざっくりした包含関係を図2に示す。

写真を拡大 図2:価値観/ 規範の包含関係

一番外側の個人の尊重は、憲法の保障する諸権利を支える原理であり、当該諸権利には公共の福祉の観点で制限が課されるものもそうでないものもある。

その内側にある平等権は公共の福祉の制限を課される場合もあるが、切り札としての権利と重なる部分もある(第2章の十四条一項前段に関する記述を参照)。

そのさらに内側にある個人の人格の根源的平等性は、切り札としての権利の核心であり、公共の福祉によっても制限されない原理。

そして最も内側にある差別されない権利は、個人の人格の根源的平等性を体現する切り札中の切り札としての権利。

第2章 差別されない権利を根本規範に置いた憲法再読

本章では、差別されない権利の観点で、憲法が保障する諸々の権利を捉え直す。その後で、憲法十三条で包括的に保障しているとされる、条文には明示されていない諸権利(新しい人権)、さらに、憲法が保障する権利の効力の射程の問題(公務員、外国人、天皇、私人間効力)についても、差別されない権利の観点で言及する。

差別は、憲法の根本原理(個人の尊重あるいは個人の人格の根源的平等性)の否定であり、差別されない権利は、根本原理そのものを体現している特別な権利である。