【前回の記事を読む】“少々焼き過ぎてしまった”放火殺人…焼け跡から見つかった遺体の状態は、単なる焼死ではなく…
サイコ4――人体発火
「おまえさ、いい加減何かしゃべれよ」
小川が呆れて言った。
「……」
「もう分かった、分かった。おまえはもう釈放だ。これ以上やっても無駄だ。明日には釈放するから。それでいいんだろ」
「釈放……」
「やっとしゃべった」
「ちょっと待ってください。まだ釈放しないでください」
「は?」
「もし、釈放されたらあいつらに、警察に何かしゃべったんじゃないかって疑われて、俺、殺されます」
そう言うと、大野は頭を抱えて震え出した。小川は身を乗り出した。
「あいつらって誰だ?」
「俺のことをあいつらから守ってくれるって約束してくれますか?」
「ああ、約束する。約束するとも。だから教えてくれ。あいつらって一体誰なんだ?」
「名前は知りません。俺の本名は戸田徹、17歳です。千葉から家出してきたんです。だから偽名を使っていました。でも未成年じゃ働き口もなくて、半年前からホームレスたちと一緒に公園に住み着いていたんです。でも食うものにも困って、おじさんたちにおすそ分けしてもらいながら何とか生きていました。
それで何とかバイト先を探そうと思って、ある夜、新宿をうろついていたら、道で男にぶつかりそうになったんです。その男は今、俺が来ているパーカーを着ていました。そして道路の反対側にあるマンションの上の方をずっと眺めていたんです。
何してるんだろうと思いながら通り過ぎようとしたら、いきなりマンションの上の部屋が爆発して火事になったんです。
俺が驚いて見ていると男が、『見てた? 他人に言ったら君も殺すよ』と言いました。俺は怖くなって自分のテントに逃げ帰りました。でも、次の夜、別の男がテントにやってきたんです」
「別の男?」
「はい。体格がよくて、頭が大きくて、サングラスとマスクをしていました。そしてこのパーカーを俺に渡して言ったんです。
『指定された日時と場所にこれを着て周囲を歩け。指示通りにできたら金をやる。だが、指示を無視したり、我々のことを他人や警察に言ったらおまえを殺す』って。
俺は金が欲しかったし、あいつらが恐ろしいのもあって、言うとおりにしたんです。
そしたらどちらの家も火事になってしまって。俺に罪を着せようとしているんだって分かりました。
でも、どうすることもできなかった。テント暮らしじゃあいつらから身を守りようがなかったんです。お金はもう要りません。でも、あいつらから俺を守ってください」
小川は驚くべき告白に大きく息を吐きながら椅子の背にもたれかかった。