「そうか。安心しろ。君のことは俺たちが全力で守ってやるから。とりあえず、似顔絵捜査官を呼ぶから、その男たちの似顔絵作成に協力してくれるか」
「分かりました」
外で話を聞いていた鍬下が呟いた。
「あの男は西須悠雅ではなかった。西須は今もどこかに」
小川が席を立ち、部屋を出ようとした時だった。戸田が急に身悶えし始めた。
「暑い、暑い」
戸田はだらだらと大量の汗を掻きながら、パーカーを脱ぎ、シャツとズボンも脱ぎ、下着一枚になった。
「おい、大丈夫か?」
彼の体全体から大量の蒸気が沸き立ち始めた。
「おい、どうした!」
「うわああ、熱い、熱い!」
殺虫剤をかけられたゴキブリのように彼は床に仰向けにひっくり返り、手足をバタバタさせてもがき始めた。
「鍬下、水だ! バケツで水持って来い!」
小川が叫んだ。次の瞬間戸田の体が発火し、全身が炎に包まれた。戸田は火だるまになりながら、取調室で七転八倒した。
「消火器だ。消防を呼べ!」
火災報知器が非常ベルを鳴らし、スプリンクラーが作動し、シャワーが室内に撒かれた。部屋の中からもうもうと黒煙が湧き出してきて、何も見えなくなった。小川が咳込みながら室外に脱出した。
「那花さん、一階に逃げて!」
鍬下は恐怖で目を丸くして立ち尽くしている麻利衣に避難を指示した。
次回更新は3月20日(金)、21時の予定です。
【イチオシ記事】40代半ば、自分が女であることを忘れて10年以上。デートや恋がしたくて、ネットで出会い系や交際クラブを探してみることにした
【注目記事】マッチングアプリで出会った男に騙され監禁。そこには複数の女性がいて、上の階からは「お願い、殺さないで」と懇願する声が…