【前回の記事を読む】全国の孤児院から集められた子供たち…その共通点は、ある“優れた才能”があることだった。
サイコ4――人体発火
「博士がいなくなると、すぐに神撰がやってきた。能力のない子供たちは解放されたが、私と悠雅は拉致され、青木ヶ原樹海の中にある神撰の特殊訓練施設に監禁された。外部からは完全に遮断され、毎日、地獄のような命懸けの訓練が行われた。
最初のテストは、目隠しをされ、施設からかなり離れた森の奥に水や食料もない状態で一人で置き去りにされ、施設に戻れるかどうかテストされた。
時にはバトルロイヤルも行われ、能力に欠ける者たちはそこで容赦なく葬り去られた。訓練の間、子供たちは神撰に絶対的忠誠を誓うよう徹底的に洗脳された。
10年に及ぶ過酷な訓練のお陰で私の能力は完全に開花し、史上最強の完全能力者(パーフェクトサイキック)となった。訓練も残すところあと1年となり、修了すれば海外に工作員として送られる予定だった。私は別にそれに喜びを感じていたわけではないが、特に不満や疑念もなかった。
だが、悠雅は違った。やつは幼い頃から神撰の教えに疑問を抱き、常に反感を持っていた。そして17歳の時、私に脱走計画を持ちかけてきた。二人で神撰を抜け出し、海外に逃亡しようと言うのだ。私はどちらでもよかったが、面白そうなのでやつの計画に乗った。
だが計画実行の日、脱走に気づいた神撰は追手を差し向け妨害してきた。私は首尾よく切り抜けることができたが、悠雅は捕まってしまい、やつとはそれきりになってしまった。
自由の身になって私は初めて神撰の教えが完全に間違っていたことに気づいた。今は世の中の役に少しでも立とうと思って探偵をしているわけだ」
賽子が作り話としか思えないような話を真剣な顔で語ったので、麻利衣は夢でも見ているかのように呆然としてしまった。
「それで、どうして私を助手にしたんですか」
「それはいずれ分かる」
「いずれって……」
「もしその話が本当だとすると、西須悠雅はその神撰という組織に命じられて3件の連続放火事件を起こしたんだろうか。一体何のために」
鍬下が訊くと賽子が答えた。
「これ以上質問するのならまず金を払え。ただで協力すると言った覚えはない」
「これは失礼。警察なので金を払うわけにはいかない。あとはこちらで調べてみます」
鍬下は事務所を去って行った。
鍬下は新宿のカフェで多田淳の秘書だった山口貴之に話を聞いていた。山口は年齢58歳、がたいの良い顔の大きな男で、銀縁眼鏡をかけていた。
「本当に先生は品行方正を絵に描いたような方で、政治は国民のためにあるという信条を常日頃からおっしゃっていました。それがあんなことに……本当に残念です」
山口は芝居がかったやり方でハンカチで涙を拭った。
「火災の前に何か変わった様子はありませんでしたか?」
「いえ、特に。その日も防衛省で遅くまで仕事をされて、部屋に戻られたのは午後10時頃だったと思います」
「仕事やプライベートで何かトラブルを抱えていたとか」