【前回記事を読む】教会とは違い、神社は真ん中にシンボルではなく『空』がある。…この違いから言える、西洋と日本の違いは…

第五章 我々は、なにを学び、どこへ行くのか

世耕さんや国内外の経営者などが画策している、新しい学び合いのコミュニティは、テーマに〈ヒューマニティ〉を据えている。

・住む土地の環境と人間が、注意深く共生する

・地域の文化と人間コミュニティの、持続的な成熟

・その地域ならではの経済充足と、働き学ぶよろこび

――これまでグローバル経済が取りこぼしてきた、各地で異なる環境文化の中で多様にしあわせになるための知を、改めて掘り起こしてみたいのです。それを学術論述やビジネスモデルといった既定の理論書式ではなく、人間の心持ちや希望として、ごく平らなコミュニケーションで啓発し合う場がつくりたいのです。

はじめは、既存の大学院など教育機関に寄付講座を開設する案も出ました。専門家が真摯に研究を重ねたアカデミアの底力は、創立メンバーの誰もが認めていますが、権威的・形式的なしきたりの中、人間を客観視した論文や調査レポートを成果とするような思考内に拠点を置くことには、また全員が違和感も持っていたのです。

ビジネススクールは、経営管理の職能訓練が存在原点のため、選択肢に入りませんでした。我々の考える学び合いは、厳かなものではなく、緩やかで創造的なものにしたい。

終わりのない相互啓発にしたい。ボードメンバーは、〈学ぶ〉ということの本来を見直しています。

ネイビーが参画の依頼を受けた時、世耕さんは、サッカーの日本代表監督が常備していたような小さなノートをポケットから取り出して、そんな話をしてくれた。

こんなやり取りもあった。

「なぜ、僕なんでしょう?」

「あなたの実績や世の中に対する想いは、もちろん考慮に入れています。なにより大切なことは、あなたは専門家や先生然としていない。話材を選ばないスーパーリスナーだからです。スーパーリスナーというと、単に聞き上手のように感じるかもしれませんが、対話する仲間を信頼でつなぎ、対話を拡張することができる……もっと深いタレンタビリティだと思います」

世耕さんはその役割を、〈nudger(ナジャー。ちょっと肘でつつく、軽く背中を押すひと)〉という言葉で表現した。